『犬の雷恐怖症』


怖がる・怯える愛犬に・・今、一体何が起こっているのか?

それを理解することで恐怖症の改善、緩和、克服の糸口を一緒に見つけていきましょう!

 

恐怖症とは何!?

 

    『恐怖』とは特定のあるものに対して、心理的・生理的に起こる脳内反応であり、動物たちが自らの身を危険から守るための正常な反応です。逆に、恐怖心が全くなければ動物達は自然界で生き延びていくことはできません。
ところが、恐怖反応は動物にとって正常の反応とは言っても、人社会で暮らす上では、私たち人(飼い主)にとっては困った問題になる、犬にとってもストレスにさらされるという好ましくない状況を作り出すことにもなりかねません。
『苦手』という程度であれば、徐々に慣れさせること(脱感作療法)で改善できることが多いのですが、ここで言う『恐怖症』とは、心理・生理的に異常なまでの反応(パニック)を示すフォビアを言います。身体に起こっている反応をすでに自分ではコントロールできなくなっている場合が多いのです。
主な反応としては、

  • よだれを大量にたらす
  • 嘔吐する
  • 身体の震えが止まらない
  • おもらしをする
  • 息づかいが荒くなる (パンティング)

など、自律神経による反応が特徴としてあります。

 

そして、音に驚いた瞬間にパニックを起こし逃走しようとしたり、または(上記のような)生理的反応がいつまでも続き、
食べ物や水も受けつけない、声をかけても犬の気を引くことができないような状態であれば『恐怖症』のレベルと言えるでしょう。これは自律神経や情動をコントロールする脳内のリンビック・システム(大脳辺縁系)のスイッチがONになり、身体が非常事態に備えて他の部分を一時的にシャットダウン(停止)状態になったためと推測されます。
そして、その恐怖体験が強ければ強いほど、この恐怖症は徐々に悪化する傾向にあります。何故なら、犬の恐怖の記憶はその時に目に映った画像、音、感触、匂いと結びついて記憶されるからです。このことによって、その怖い経験(学習)が『第2の引き金』として広がっていくのです。

たとえば、散歩中に大きな花火の音でパニックになった犬はその後、パニックになった(その)場所を避けるようになるかもしれません。散歩のための外出を拒むようになるかもしれません。雷で怖い思いをした犬は、雨が降ってきただけで恐怖を感じるようになるかもしれませんし、フラッシュのような光るものを怖がるようになるかもしれません。

恐怖症にはいろいろなものがありますが、その中でも『雷恐怖症』の克服は大変難しいと言われています。なぜなら、音や光の恐怖の他に気圧の変化やオゾンの匂い、雷雲から発生する静電気なども要因のひとつと考えられるからです。

 

 

では、どんな犬が雷恐怖症になりやすいのか?

 


1 外的刺激に対して反応しやすい犬。


外的刺激に反応しやすい犬というのは、目に入るもの、耳に聞こえるもの、匂うもの、身体に触れるものなどに対して敏感なタイプの犬です。ちょっとした環境の変化や飼い主の心境の変化、精神状態などにも敏感に反応しやすい犬がこのタイプには多いのではないでしょうか。生まれつきの場合もあれば、子犬時の社会化不足ということもあります。過去の恐怖経験によるトラウマということもあるでしょう。ちなみに、アメリカで行われた犬の雷恐怖症の調査・研究によるデータでは、「牧羊犬」もしくはその系列の犬たちに多くみられ、雷恐怖症といわれる犬の約40%が同時に「分離不安症」を抱えているとのデータもあります。当ショップ(カニス)でご相談を受けた統計で言いますと、和犬タイプの犬は年齢が比較的若い頃から発症し、ゴールデンは6歳ごろから急にひどく怯えるようになる例が多く報告されています。

 

 

2 静電気を身体に溜めやすい、もしくは溜まりやすい環境にいる犬。

 
元々、犬は私たち人間よりも静電気を身体に溜めやすい動物だといえます。1番の違いは身体のしくみ、とくに発汗作用ですね。私たちの皮膚には無数の毛穴があり、そこから水分(汗)が排出され、全身を潤わせています。しかし、犬の身体にはこの汗腺がごく限られた場所にしかないので、常に身体の大部分が乾燥している状態なのです。その上、ほとんどの犬の全身が毛に覆われています。その毛が摩擦しあうことで静電気が発生しやすいといえるのです。犬種によって静電気を溜めやすいタイプがいるのは、この毛質も関係しているのかもしれません。生活している場所がカーペット等の場合も雷時に静電気を感じやすいようです。犬が車に乗りたがったり、風呂場や浴槽の中に避難したり、金属製の排水パイプに寄りかかる、濡れた場所を好む、または床を避けて高いところに登ったりする行動は、静電気による不快感から逃れるための行動と考えられます。
放電できる場所=身体の中に溜まった静電気を逃がすことができる場所を知っているのかもしれません。

 

 

3 シニア犬。


これは、今まで雷に対して過剰な反応をみせたことのなかった犬が歳をとってから急に雷を怖がるようになるケースです。
考えられる原因としては、聴覚の衰えによって別の器官が敏感に反応するようになると思われます。耳が遠くなって、雷の音には反応しなくなったものの、身体に感じる不快感が増してしまう場合などです。そして、注意が必要なのが加齢によるホルモンの変化です。とくに甲状腺ホルモン値が低くなってくると外からの刺激に対して敏感になる傾向があります。とくに思い当たることもないのに、今までになかった行動が現れたり、反応が急に悪化した場合は、一度、かかりつけの病院で検査をされることをお勧めします。

※サイトハウンドに属する犬種は、元々、甲状腺ホルモン値が低い場合がありますのでご注意ください。

 

 

雷恐怖症の犬の多くは、雷を連想させるものや気配を感じただけで落ち着きがなくなり、避難場所を求めてウロウロし始めます。なかには、安全な場所へ一刻も早く避難したいができない!というパニック状態が引き起こす破壊行動や自傷行為がみられることもあります。雷時にクレートを使用する場合ですが、犬が自ら中に避難するのであれば問題ありませんが、無理やり閉じ込めることになるとパニックがさらにひどくなり恐怖症が長引きますのでご注意ください。普段、庭に繋がれている犬の場合も同様で、避難できない恐怖が増すので、できれば雷の時だけでも玄関や家の中に入れてあげてはいかがでしょうか。

 

 

では、肝心な対処法のお話です。

 現在、対処法としてよく言われているのが音響CDなどを使って、恐怖反応がでない音量から徐々に音に慣れさせていく「脱感作」療法と、犬の大好きな食べ物やおもちゃをつかって、恐怖心と快の情動を入れ替えていく「逆条件付け」を同時に行う方法、獣医師による安定剤の処方、レメディなどの自然から摘出した療剤の使用、リラックス・マッサージ、もしくはただひたすら雷が終るのを愛犬と共に待つ。などがあります。犬のパニックの程度によってもそれぞれの効果の出かたは違いますが、すでに恐怖症(フォビア)にまで発展してしまっている犬の場合、マッサージ、おやつ・おもちゃ、音響CDなどにはほとんど反応しないことが多いです。(理由は先に説明した通りです。) 逆にマッサージで落ちつく、おもちゃやおやつで気が紛れるのであれば雷恐怖症としてはまだ軽度といえるでしょう。

音響CDに関しては、All Aboutのインタビュー記事でも触れていますが、練習を始めるタイミングが重要になります。それから、多くの雷恐怖症の犬が花火も怖がるために混同されがちなのですが、雷恐怖症の場合は「音」にだけ反応しているわけではなく、まったく別の要因(気圧の変化やオゾン、静電気)などとも関係してくるので克服が難しいといわれています。

私個人的には「花火」も音だけではなく身体に伝わる振動(空気中を伝わる音波)も、犬が恐怖や不快を感じる原因のひとつだと思っています。太鼓の音に反応するのも同じ理由からではないでしょうか。

CDやテレビから聞こえる雷の音・花火の音にはどんなにボリュームを上げても反応しない犬もいます。これも、身体に感じるものが偽物と本物では大きな違いがあるからだと思います。

病院で処方される安定剤はかなり高い確率で効果がありますが、犬の身体にかかる負担等を考えると、なるべくなら頼りたくないというのが多くの飼い主さんの意見です。お薬は一時的な対処法ですので、雷に対する恐怖心の緩和・克服(学習)にはなりません。ただし、状況によってはお薬が必要な場合もありますので、その場合は獣医さんとご相談ください。

 

 

では最後に、静電気に対する対処法ですが、これを克服するには、まず身体に感じる不快感を取り除くことから始めなければいけません。そこで役に立つのが、特殊加工されたストーム・ディフェンダー・ケープです。犬の体内に溜まった静電気を取り除き、雷時に感じる不快感から愛犬を守ります。もう水場やトイレなど放電できる場所を探してウロウロする必要がなくなります。そして、犬の身体をケープによる適度な圧によって包み込むことで落ち着きの効果も期待できます。学習によって強化されてしまった恐怖心を、もう一度ケープによって学習しなおすという方法です。

もちろん、犬によって効果の表れ方、時間には個体差がありますので、まずは、説明書通りにケープを着用していただき、最低3回の雷をご体験ください。

 

 犬の恐怖症の克服は想像以上に難しく、根気を必要とします。しかし、近年の多くの研究によりそのしくみや効果のある対処法などが次々と明らかになってきているのも事実です。まずは、私たち(飼い主)が犬の恐怖症について正しく理解し、ご自身の愛犬に合った方法で対応されることを望みます。

 

 カニス店長 グリーンウッド・アツコ

 

 

 

 

 

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